『ハナコの愛したふたつの国』~日系人の女の子が見た戦後の日本~

本の紹介
アーサー
アーサー

小学校で学校司書をしているアーサーです

普段は学校図書館に来る子どもたちに色々な本をおすすめしています

★学校司書ってなに?と思った方はこちらをお読みください

今日は、戦後の日本にやってきた日系人の女の子の物語を紹介します!

411ページある長いお話ですが

・主人公の視点が私たちと近いこと

・誰も亡くならないこと

この2つのことがあるので読みやすかったです

おすすめは中学生以上!

本好きの子なら6年生からでも読めるよ

『ハナコの愛したふたつの国』

作 シンシア・カドハタ 訳 もりうちすみこ 出版社 小学館

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あらすじ

あらすじ

アメリカで生まれたハナコは日系人の女の子

カリフォルニアに住み、家族でレストランをやっていた

しかし真珠湾攻撃の後、日系人は収容所に送られる

さらに両親がアメリカ国籍を放棄したため、祖父母のいるヒロシマへ戻ることとなった

ハナコの視点

この本は他の戦争文学とちょっと違った視点で書かれていて珍しいです

今までの読んだ本の多くは体験者の視点で書かれているので

当時の当たり前を知らない私にとっては「こんな生活をしてたんだ、つらい体験だっただろうな」

といったお話の世界の中で起きた出来事としてとらえてました

でもこの本では主人公が日系人です

戦前とはいえハナコのアメリカ生活は今の私たちの暮らしと似ているところが多く

ハナコが感じる当時の日本の様子やアメリカ生活との違いは私たちに近い感覚かなと思いました

 

例えば、ハナコはたびたび自分の食べ物を恵んで欲しいと言ってきた人に分け与えます

ハナコ自身もアメリカ生活の最後の4年間は収容所で不便な生活をしてきました

でも日本に来て収容所では飢える心配はなかったと気づきます

日本で食料を手に入れることが簡単ではないこともハナコは分かっていますが

それでも困っている人に分け与えるのはハナコの心に余裕があるからできるのかなと思いました

きっと多くの読み手も戦後ひもじい思いをしている人に対して

冷たい態度をとるのはかわいそうだと感じるはずです

でも読み手の今の状況も食べ物に困らない現代に生きてます

ハナコと同じく心に余裕があるからかわいそうって思えるんだと思います

もちろん戦後の日本人の中にも分け与える人はいたと思うけど

日本全体が貧しく自分が生きていくのに精一杯で余裕がない人がほとんどだったことも本から分かります

だれも亡くならない

作中の中に広島駅でハナコが食べ物をあげたキヨシという少年がいます

キヨシは原爆で顔と手に傷をおっていますが妹と2人で生活をしている戦争孤児です

私はこのキヨシがいつか死んでしまうのでは思いながら心配しながら読んでました

なぜかというと前に『命のうた~ぼくは路上で生きた 十歳の戦争孤児~』(竹内 早希子 著/石井 勉 絵 童心社)という戦争孤児の話を本で読んでいて

頼れる人がない中、子どもだけで生きていくのは相当辛く大変だということを知っていたからです

そんな心配しつつ、キヨシの生きるためのしたたかさみたいのは怖いなとも思ってました

『命のうた』では戦争孤児がしたたかになるのは生きるためだからしょうがないと思ってたのに

この本ではは生きるためのしたたかさが怖いと考え方が変わってしまいました

そんなキヨシに対してハナコは怖いと思ってないし

嫌な目にあってもキヨシのために仕事を紹介するのがすごいなと思いました

終わりに

・主人公の視点が私たちと近いこと

・誰も亡くならないこと

この2つがあることで、ハナコに寄り添いながら読み進めることができます

長い物語がお好きな人は、ぜひ読んでみてください!

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