小学校で学校司書をしているアーサーです。
普段は学校図書館に来る子どもたちに色々な本をおすすめしています。
★学校司書ってなに?と思った方はこちらをお読みください。
今日は
チョコレート屋さん、アナゴ漁師、ロボット開発者の3人の仕事について書かれた本を紹介します!
この本には3つのお話が入ってます。
『世界でいちばん優しいロボット』
文 岩貞るみこ 絵 片塩広子 出版社 講談社
幸せを運ぶチョコレート
1つ目はチョコレートのお店をつくった石原さんのお話。
すごいエネルギーを感じられる人でした。
学生時代にやっていたラグビーの経験から仕事も勝ちを取りに行く。
でも仕事を続けていくうちに自分が勝つだけではダメ、勝ちと勝ちウィンウィンであるほうがよいことに気付き行動していきます。
そんな中、知り合いから紹介されて知ったコロンビア産のチョコレート。
実は石原さんはチョコレートが苦手ですが、「コロンビアのチョコレートはおもしろい」と言われコロンビアに旅立ちます。
この行動力がすごい!
紹介されたカカオ農家で口にしたチョコレートはチョコが苦手な石原さんでも格別においしく
畑によって味も違うことがわかったのです。
しかしカカオ農家の中には、カカオの木の他にお金になるコカインの木も育てているという問題も抱えていました。
そこで石原さんは毎年必ずカカオを輸入するから、コカインの木を育てずカカオの木だけを育て続けて欲しいと約束をします。
カカオ農家は最初、石原さんの言葉を信じませんでした。
だってまだお店もない状態でしたから。
この後、石原さんは自分もカカオ農家の人もチョコレートを食べる人もみんなが幸せになるチョコレートのお店をつくるのです。
そうしてできあがった石原さんのお店は
自分のお金儲けのためでなく「みんなが幸せになるお店」
コンセプトって物語があって決まっていくんだなと思いました。
石原さんはパティシエではないからこそ、強い信念があってお店を経営しています。
そこがお話で読み取れて、とてもおもしろかったです。
石原さんのお店「メゾンカカオ」は実際に店舗・公式の通販もあります。
パッケージもステキで、バレンタインに自分用に買いたいです♪
魚をにがす漁師さん
2つ目は神奈川県でアナゴ筒漁をしている齋田さんのお話。
齋田さんの家では祖父の代から漁業をしています。
26歳でひとり立ちをして漁船を買い、選んだ漁の方法はアナゴ筒漁でした。
実は漁には許可証のいる漁と自由にできる漁とあります。
色々な種類の魚を捕まえられる底引き網漁は、許可証の数に限りありこれ以上だせないというのです。
そこで自由に漁ができ、自分の漁港ではまだやっていないアナゴ筒漁にしたのです。
齋田さんはアナゴ筒漁をしながら研究を重ねました。
筒の大きさ、捕まえたあなごを逃がさないようにする工夫…その結果たくさんとれるようになってきたのです。
しかし1992年にたくさんとれたアナゴが次の年から半分に減ってしまいました。
そこで水産技術センターで働く清水さんは、齋田さんに協力してもらいアナゴの調査に取り掛かります。
そして分かったのは幼魚も筒に入ってしまっていたことでした。
清水さんはアナゴの筒に幼魚が逃げられる程度の穴をあけることを提案しますが
漁師さんたちは穴が大きすぎて、売れるアナゴも逃げてしまうと反対をしたのでした。
「魚を逃がす漁師さん」というタイトルなので、この後に必要なアナゴだけを捕り幼魚は逃がす工夫をしていきます。
なんとなく海の生きものって減らないイメージだったのですが
ちゃんと漁業のルールが決まってるんですね。
漁にも許可証が必要な漁があることを初めて知りました。
そしてルールは漁をやる人みんなが納得しないとダメ。
養殖とちがって自然の魚を捕るのだからね。
このアナゴ筒漁はみんなが納得する方法を1年間、学生の力も借りて調査をしています。
仮説を立てて調査をし、アナゴ筒漁の新しいやり方を発表する、
発表を聞いて「よし!その方法でやろう」と決心する漁師さんと同じ気持ちで読み進められるし
これからも海の生きもの命は続いていくんだという安心も感じられるお話です。
世界でいちばん優しいロボット
3つ目は分身ロボットオリヒメを開発した吉藤さんのお話。
勉強についていけず同じクラスの子からも相手にされない、病気で学校にもなかなか行けない日々。
しかし中学一年生の時に母親が申し込んだロボットコンテストで優勝!
そこから生活は変わ…りませんでした。
むしろ次の年に優勝者だけが参加できるコンテストで優勝できなかったことから
すごいロボットを作っているK先生のいる高校にいきたいと思い勉強する意欲がわきだしたのです。
高校ではK先生が教えている電動車いすのグループに入れてもらい国際大会で3位をとります。
しかし、そこで世界各国の高校生たちが自分の人生について語っているのを聞き
自分はなにがしたいんだ、なんのために生きているんだろうと考え始めます。
電動車いすは体が不自由な人にとって便利に生活ができるものですが家の中では使えません。
それを知った吉藤さんは、「みんな、なにが不便で、どんな生活をしているんだろうか」と考え
周りのお年寄りから話を聞くと、みんな孤独とたたかっていることがわかりました。
かつて自分も家に閉じこもっていた時のつらかった日々を思い出し、
「孤独をなくしたい、ぼくは孤独を解消することに残りの人生のすべてを使おう。」
とロボット作りに邁進するのです。
自分の研究ために自分の苦手なことさえも研究する吉藤さん。
例えば、友達ロボットの開発をするのだから友達はいらないと思っていましたが
研究室で先生が「人工知能は人を愛し、なぐさめ、いやす」という言葉に疑問をもちます。
自分が学校に通えるようになったり、電動車いすのグループに入って国際大会にいけたのも
全部周りの人のおかげだったからです。
「人を孤独からすくえるのは、人だけ。」
そう気づいた吉藤さんは、人間の友だちをつくるために苦手なことだけど行動し始めます。
吉藤さんが感じた孤独感が、よりよいロボット開発の原動力になっているっておもしろいなと思いました。
目標を決める時ってなんとなく、自分の好きなことややりたいことからが多く
自分のマイナスな部分に目を向けることって少ないのではと感じました。
物語の後半では、分身ロボットオリヒメが大会で優勝しそれがきっかけで出会った番田さんとのエピソードが書かれています。
番田さんは首から下が動くことができませんが、外とのつながりを求めインターネットを通じてたくさんの人とつながっています。
そしてこの出会いがきっかけで、吉藤さんの孤独と番田さんの感じる孤独は違うということを知り
そこからオリヒメはさらに進化をしていきます。
今まで吉藤さんの話の中で特定の人とのエピソードが出てこないので
番田さんは特別な人なんだなというのが伝わりますし、別れには涙してしまいました。
まとめ
文章を書く岩貞るみこさんは、他にもいろいろなノンフィクションを書かれていて
どれも分かりやすく読みやすいです。
3つの話が入っていますが、区切りよく次の話にいけます。
長文が苦手な子も読みやすいと思いますよ。
仕事の本としても紹介できますが、生き方の本としてもおすすめできそうです。
生き方に迷っている大人もどうぞ(笑)
おすすめは5.6年生!
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