今回は2019年に出版された、まはら三桃さんの『思いはいのり、言葉はつばさ』を紹介します。
おすすめは高学年から大人まで!
こんな人たちにおすすめです。
・主人公は女の子がいい人
・異国の文化を知りたい人
・上橋菜穂子さん、荻原紀子さん、菅野雪虫さんの本が好きな人
ぜひ最後までご覧ください。
ちょとだけ自己紹介。
小学校で学校司書をしているアーサーです。
普段は学校図書館に来る子どもたちに色々な本をおすすめしています。
★学校司書ってなに?と思った方はこちらをお読みください。
あらすじ
『思いはいのり、言葉はつばさ』
著 まはら三桃 出版社 アリス館
中国、山の近くの村に住むチャオミンは10歳の女の子。
4月の始まり、朝日が昇り始めるとチャオミンは待ちきれず寝床から跳ね起きた。
だって今日は、1つ年上の友だちジュアヌと刺繍やニュウシュ(女性だけの文字)を習いにいくのだ。
ニュウシュを初めて見せてもらったときから、独特で上品な文字に魅せられずっと楽しみにしていたチャオミン。
裁縫道具が入った袋とお弁当、シャンユ(夏みかん)を母親から受け取り、張り切って家を飛び出した。
主人公は元気な女の子
10歳の女の子が主人公ですが、とにかく天真爛漫でかわいいです。
例えば初めて文字を習いに行く日、何度も目が覚めてしまい夜明けとともに跳ね起きるところは
いかに楽しみで楽しみで仕方がないというのが伝わってきます。
遠足の前日のようなわくわくした気持ちと一緒ですよね。
そして文字を覚えていくために何度も練習するのですが、チャオミンにとってはまったく苦になりません。
それどころか字を書ける場所であれば、どこでも練習してしまいます。
自分の好きなものを習得するのって苦にならないどころか、やりたくてたまらなくなりますよね。
また文字を覚えてからチャオミン憧れのお姉さんシューインに手紙を書く場面があります。
ところが自分の気持ちが先走りすぎてうまく言葉を手紙に書けないもどかしさ。
初めて手紙を書く時って、そんな気持ちだったのかと自分の中の初めてを思い出させてくれました。
村に住んでいるからなのかチャオミンは、今どきの10歳の子どもよりも幼く感じます。
その分、初めて目にするものや体験を喜ぶ姿は、ダイレクトに伝わってきてうれしくなりますよ。
知らないことを知れる喜びをチャオミンと一緒に味わえる物語です。
物語に出てくる中国の風習
この物語は中国の山間にある村が舞台になっています。
作者の創作部分がありますが、本当にあった出来事も織り交ぜられて物語がつくられています。
それがあまり自然なので、チャオミンが生き生きと感じられるんだなと思います。
実際に存在しているのは、ニュウシュを始めとしてチャオミンがやっているてん足や結交姉妹(血のつながらない娘たちが姉妹の契りを結ぶ)、三朝書(結婚の時に贈られる歌の本)など、あまり知られていない中国の風習がでてきます。
この中で唯一知っているのはてん足ですが、女性の足を成長させないように小さな靴をはかせていたくらいの知識しかありません。
しかも中国の女性みんなやっているものだと思ったら違ってました。
本の中では漢族の女の人であること、野良仕事をしなくてすむ家…裕福な家だという証なんだそうです。
チャオミンの家はお父さんが漢族、お母さんがハル族という少数民族で父方の祖母が漢族であるため、てん足をしています。
てん足は足が大きくならないようにきつく包帯を巻き、布のくつをはくのだけれど毎日脱ぐことはないとのこと。
チャオミンも長距離を歩いたため足から血が出てしまう場面がありますが、その時に手当をするので脱ぐことができました。
その時の気持ちよさそうなチャオミンのしぐさから、よっぽど痛いんだなと言うのが伝わってきます。
変な風習だなと思いましたが、考えてみれば日本も江戸時代の頃はお歯黒をやっていたのだから国によって美意識は変わってきますよね。
まだまだ自分の知らないことがあることをこの本は教えてくれました。
★もし子どもがてん足について知りたいとなったときは、百科事典で調べることをおすすめします。ネットでは簡単に調べられますが、性的な意味や写真もあるので先に大人が確認してくださいね。
終わりに
今回は2019年に出版された、まはら三桃さんの『思いはいのり、言葉はつばさ』を紹介しました。
10歳の女の子チャオミンの天真爛漫さ
日常生活から見える中国の風習
この2つが伝わる物語です。
特に中国の風習は日本と比べることで自由研究にも発展できそう!
興味を持った人はぜひ調べてみてください。
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